看護師といえばドラマでもよく取り上げられるため”救命救急”などの最先端で働く印象は強くないでしょうか?
急性期、回復期、終末期での経験してきましたが、看護場面ややりがいを思い返すと終末期看護が強く印象に残っています。
今でも忘れられないほどの経験がたくさんできました。
病気で余命わずかの人たちが治療を目的とせず、残された時間を充実して最期を迎えられるようにすることが目的です。
終末期看護は”患者さんの死”と向き合う現場なので、つらい思いもたくさん経験すると思います。
しかし、終末期の患者さんやその家族さんがのぞむ
『その人らしい最期』を迎える
この目標を中心として、チーム一丸となって協力できる現場はとても暖かいものでした。
しかし終末期の患者さんと関わる際、
『その人らしい最期を迎える』とは…?
疑問を抱える人もいるのではないでしょうか。
今回は緩和ケア認定看護師のもとで働いた経験をもとに、実際の終末期看護の場面についての1例についてお話していきたいと思います。
- 終末期看護の実際を知りたい
- 看護ケアについて知りたい
- 患者や家族との関わり方を学びたい
終末期看護ケアの参考になれば嬉しいです。
死の受容過程について【キューブラ・ロス】
患者さんや家族さんは死を受容するために、5段階の経過をたどります。
「何かの間違いだ」「信じられない」
- 病を現実として受け止めることができない
- 周囲の人と距離を置くようになる
「なぜこんな目にあわないといけないの」
- 死が否定できず怒りがこみあげてくる
「悪い事はしないから病気を治して…」
- 死から逃れるため神や人と取り引きをしようとする
「生きていてもしかたない」
- 死から逃れられないと悟りうつ状態になる
「ふさぎこんでいても仕方がない。」
- 死を受け入れ心に安らぎが訪れる
患者さんの心理的側面によって…
- 1~5段階が必ずしもすべて経験するとは限らないこと
- 受け入れ状況により、受容過程は前後する可能性もあること
ということは頭に入れておきましょう!
では次に実際に経験した看護場面のお話をします。
終末期の看護場面について
終末期の患者さんとの出会い
私が新人看護師のとき、ありがたいことに共に働くスタッフや患者さんから
『あなたの笑顔を見ていると元気が出る。』
と声をかけてもらう機会があり、その言葉をプラスに捉えすぎた私は
誰に対しても笑顔で接しよう!
と心がけていました。
しかし終末期患者さんを初めて受け持った時、同じように笑顔で接すると…
あなたの笑顔を見ているとつらくなる。
というお言葉を頂きました。
その言葉を聞いてから、終末期の患者さんとの関わり方がわからなくなり、次第に笑顔で接することがこわくなりました。
先輩看護師に相談したところ…
- 死の受容過程で『否認』の段階
- 患者さんは病に対して受容ができていない状況
- 終末期看護について勉強しなおすこと
上記のご指導を頂きました。
この経験から、
”笑顔”は時に終末期の患者さんの精神面を傷つけてしまうことがある
ということを知りました。
軽率な行動や自己の学習不足が、時として相手を傷つけると痛感しました。
終末期患者さんへの関わり方の変化
先輩からの指導を頂き、
- 終末期看護についての勉強
- 先輩看護師の関わり方や声かけの観察
お手本となる先輩の行動をジーっと覗いてました。
初めは患者さんとの距離感や関わりに戸惑うことも多くギクシャクする時もありましたが、
- 患者さんの言葉を”反復”する
- ”沈黙”を恐れず患者さんのペースで話を待つ
- 苦痛な症状の緩和に努める
上記の行動ができるよう意識していました。
上記を意識することで、患者さんが思いを少しずつ表出してくれるようになりました。
終末期患者さんの思い
愛犬がいるけど死ぬ前に会いたかったな…。
患者さんがポツリと思いを表出されました。
しかし患者さんの病気は白血病…
- 免疫機能が著しく低下
- いつ命の危機にさらされてもおかしくない状態
想像以上に過酷な状態でした。
- 患者さんの生命の維持を優先するか
- 愛犬と会える時間を確保するか
厳しい選択が必要となりました。
しかし患者さんの思いは、
もう残された時間も少ない。1日長く生き延びるより愛犬に会わせてほしい。
と訴え続けていました。
患者さんの思いを尊重する看護
患者さんの思いを主治医や家族へ伝える方針となりました。
看護師間で話あった際もたくさんの葛藤と意見が…
- 死期を早めてしまう可能性があっても会わせるべきなのか…?
- 患者さんの意向を尊重し愛犬に会わせてあげたい…
- 他にいい案はないのか…
主治医とも話し合いを繰り返し行いました。
そして”患者さんの思い”を家族さんへ伝えられました。それと同時に
- 感染リスクの危険性
- 時に死の危険性を高める可能性がある
起こりうるリスクの説明がされたのち、家族さんも
本人の意向を尊重してあげたいです。
との思いを表出してくれました。そのため、
家族も含めていつ、どこで、どのくらいの時間面会できるようにするか…?
患者さんの状態をふまえながら、繰り返し話し合いが行われました。
そして…
当日状態が安定している場合に愛犬と会う方針となりました。
今までは、抑うつ傾向で表情が暗いことが多かったですが、愛犬と面会日が決定してから笑顔をみせてくれる機会が徐々に増えました。
愛犬との面会当日
面会当日…。
状態の悪化がないため面会できる許可がおりました。
しかし患者さんはベッドから起き上がることもできず、著しい免疫機能の低下と筋力低下を認めている状態でした。
患者さんの身体の負担を考慮し、
- ベッドで搬送する
- 10分ほどで帰室する
- 時刻通りに愛犬を連れてきてもらう
上記を朝の申し送りで情報共有されました。
そしてベッド搬送にて待ち合わせ場所へ到着すると、すでに入り口付近で愛犬と家族さんの姿が…。
患者さんは愛犬をみると、笑みを浮かべながらボロボロと流涙…。
そんな姿をみた家族さんも流涙され、愛犬も患者さんのそばを離れようとしません。
10分という短い時間でしたが、
会えてよかった…本当にありがとうございました。
と思いを表出してくれました。
そして後日…
面会時に撮った愛犬と患者さんの写真を家族さんに持参してもらい、
”患者さんがいつでもみえる位置”に愛犬の写真を掲示しました
その数週間後……患者さんは愛犬に見守られながら、安らかに永眠されました。
おわりに
今回実際現場で経験した終末期看護の1例は、病棟スタッフみんなでケアに取り組みました。
スタッフみんなの意見を出し合うことで、たくさんの選択ができるため、
私が発想できない意見がたくさんあり勉強になりました。
今回の1例を通して…
- 抱える思いや不安、葛藤に気づくこと
- 患者さんの代弁者となること
- ”できない”と諦めず、できる方法を考えること
終末期患者さんを受け持つ上で必要な行動だと感じました。
そして一番近くで患者さんに寄り添うことができる看護師が、いち早く患者さんの思いに気づくことが大切です。
そのためには”コミュニケーションスキル”の習得や”終末期看護の知識”が重要となってきます。
参考書で学ぶことも大切ですが、
ここでの学びがとても大きいと感じています。
ぜひ現場で『どのようか声かけをしているか?』観察し吸収しましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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